細かすぎて伝わらない契約書選手権

契約書のニッチなあれこれ

細かすぎるライセンス料不返還条項

時々、自社からライセンスを許諾する契約を書くときに、標準装備として「一度受領したライセンス料はいかなる場合も返還しない」という条項を入れるんですけど、これが結構な確率で修正のご要望を受けたりします。

「許諾側に債務不履行があった場合においては当然返還されるべきところをけしからん」と。

そうご指摘いただく気持ちもよくわかります。だって見るからに一方有利に見える条項ですもの。
とはいえ、こちらにもそう書きたい背景はありまして、「許諾側に債務不履行があったら、返金が妥当と考えておられる部分を含めて、債務不履行責任に基づく賠償請求は粛々と受けますから(応じるとまでは明言しないけど)、返金構成はご容赦いただけないか」とお返しするのがマイ定石です。

お金もらう側の契約で気を付けないといけないことのひとつに「いつ、受領したお金から不確定要素が消えるのか」というポイントがありまして、不確定要素=返金可能性があるうちは確定的な売上として扱えなくて困る…というのを以前に経理部門の人から聞かされたことがあるのです。

というわけで、許諾側としては返金じゃなくて賠償なら、売上としては確定させられるので、なんとかそっちでお願いしたいということになるわけです。
断じて「損害賠償ならワンチャン争えるかも」みたいな無粋なことは考えてなくてですね。このカシオミニを以下略。

逆に、こちらが被許諾側の場合は、ポジショントークだとしても相手の内情と許容可能性を考えると、不返還条項に真っ向勝負を挑むのは割に合わないので、賠償請求ベースで、頑張っても違約金(としての返金枠確保)+損害賠償構成までではないでしょうか。